
【最新版】A型事業所の給料相場はいくら?平均支給額と働き方の実例紹介
この記事の監修者
田代 涼
管理者/サービス管理責任者
サービス管理責任者の田代です。 介護福祉の現場で、介護職員・生活相談員として従事したのち、現在は障害福祉サービスの就労支援事業所でサービス管理責任者を務めています。 当事業所では、利用者の皆さま一人ひとりに合った就労支援を行い、「働くこと」への不安を解消できる環境づくりを大切……
就労継続支援A型事務所の給料とは?基本ポイントを解説
A型事業所では、雇用契約を結んで働くため、福祉サービスでありながらも最低賃金以上の給料が支払われます。まずは、A型事業所における給料の仕組みや支給の条件について、基本的なポイントを押さえておきましょう。
A型事業所「給料」とB型事業所「工賃」との違い
A型事業所は「雇用契約を結ぶ」ため、労働基準法に基づき最低賃金が保証された「給料」が支払われます。一方、B型事業所では「雇用契約を結ばない」ため、最低賃金の保証がないのが特徴です。一般就労とは違うため、施設などで行った作業に対して「給料」ではなく「工賃」が支払われます。雇用契約の有無が収入の差となり、令和5年のA型事業所の全国平均工賃は「86,752円」、B型事業所の全国平均工賃は「23,053円」となっています。
給料体系について
多くの事業所が、働く時間に応じて報酬を支払う「時給制」を採用しています。1日5,000円(1日5時間勤務、時給1,000円相当)のように、一部の事業所では「日給制」の場合も。時給換算にすると最低賃金と同じになるケースが一般的です。賞与は基本的になく、事業所によっては年に1回昇給する場合があります。
週20時間以上働いた場合は雇用保険に加入となるため、その分を引いた額が手取りです。雇用保険料は「給料×雇用保険料率」で計算します。A型事業所での給料であれば、その額は数百円から数千円と大きな負担ではありません。
また施設の利用料、交通費がかかる場合はそれを引いた金額が収入になります。利用料については生活保護を受けている方や低所得の方はかかりません。また交通費が一部支給される事業所もあります。
A型事業所については、以下の記事で詳しく紹介しています。
A型事業所の平均給料・月収の実態
実際にA型事業所で働いた場合、どの程度の給料が得られるのでしょうか。ここでは厚生労働省のデータや実例をもとに、最新の平均時給や全国平均給料額には地域差あり月収額の目安をご紹介します。
全国平均給料額には地域差あり
令和5年度A型事業所の都道府県別賃金によると、高い地域は東京都「106,498円」、島根県「103,724円」、低い地域は青森県「76,407円」、宮崎県「74,967円」です。上位と下位では約3万円の差があります。これは地域ごとの最低賃金の違いや、賃金を高く設定できる業種の事業所が多い地域かどうかなどで差が出てきます。
令和5年度のA型事業所4,388事業所を集計した、全国平均賃金は「86,752円」でした。前年度の「83,551円」から3,201円増加し、対前年度比103.8%となっています。地域によって差はありますが、ここ数年で平均賃金は上昇している傾向にあります。
月収の目安
時給×勤務時間×勤務日数(4週)で計算し、実際の月収を見てみましょう。
<週3日、1日4時間で働いた場合>
勤務時間/日 | 4時間 |
---|---|
勤務日数/週 | 3日 |
勤務日数/月 | 12日 |
時給 | 1,064円 |
給料 51,072円 |
<週5日、1日6時間で働いた場合>
時給 | 1,064円 |
---|---|
勤務時間/日 | 6時間 |
勤務日数/週 | 5日 |
勤務日数/月 | 20日 |
時給 | 1,064円 |
給料 127,680円 |
※大阪府の最低賃金1,064円で計算
上記は欠勤なく働いた場合です。時給の低い地域では額が約1万円ほど変わってきます。事業所によっては交通費や皆勤手当、リーダーに任命された際の職務手当が支給される場合があります。
実際の支給額の事例
実際にもらえる金額は働いた時間、日数、時給額などによって違います。雇用保険や施設利用料の有無もありますので、それぞれのパターンを紹介します。
Aさんの場合
勤務形態 | 週3日/1日4時間 |
---|---|
勤務日数/月 | 12日 |
時給 | 1,064円 |
給料 | 51,072円 |
雇用保険料 | 0円 |
利用料 | 0円 |
交通費 | 8,000円 |
手取月収 43,072円 |
Bさんの場合
勤務形態 | 週5日/1日6時間 |
---|---|
勤務日数/月 | 20日 |
時給 | 1,064円 |
給料 | 127,680円 |
雇用保険料 | 766円 |
利用料 | 9,300円 |
交通費 | 8,000円 |
手取月収 109,614円 |
※大阪府の最低賃金1,064円で計算
給料額に差が出る理由とは?
A型事業所の給料額には個人差があります。その理由として、地域の最低賃金、勤務時間の長さ、仕事内容の難易度など、さまざまな要素が影響しています。どんな点に注意すればよいかを見ていきましょう。
地域による最低賃金の違い
令和5年度の各都道府県の最低賃金は、高い地域で東京都「1,113円」大阪府「1,064円」愛知県「1,027円」、低い地域では秋田県「897円」、沖縄県が「896円」です。時給が一番高い県と低い県では約200円の差があります。この最低賃金の差が収入に直結してくるので、まずはお住まいの最低賃金の額を確認してみましょう。
事業所の業務内容
経営規模にもよりますが、事業所が扱っている仕事内容によっても賃金に違いが出てきます。単価が高くなるのは企業が直接依頼する請負業務や、専門性の高い仕事です。平成30年度の調査では清掃やPC作業、組立の単価が高くなっています。逆に単価が低い仕事は内職的な作業や単純作業です。
勤務時間・日数の違い
どれだけ働けるかも給料の金額に大きく関係してきます。1日に4時間働くのと6時間働くのでは約2,000円違ってきます。また勤務日数も、週3回と5回では大きく違います。働けば働くほど多くもらえますが、頑張りすぎて体調を崩してしまっては意味がありません。自分の体調や通院時間の確保など、無理のない範囲で勤務時間を決めましょう。自分のできるペースで始め、徐々に時間や日にちを増やしていくことをおすすめします。
A型事業所での実際の働き方と1日のスケジュール例
実際にA型事業所で働くとなると、給料だけでなく、働き方や1日の流れも気になるポイントです。ここでは、A型事業所に通う利用者のスケジュール例や、無理なく働ける仕組みをご紹介します。自分の生活スタイルに合った働き方を想像してみましょう。
平均的なシフトの紹介
週5勤務の場合は月曜日〜金曜日まで働き、土・日・祝日が休みとなります。週5シフトで1日4時間以上働いた場合は、雇用保険の対象の週20時間以上となります。平日毎日働くシフトは、一般就労を目指すうえでも生活のリズムがとりやすくなります。
週3勤務の場合は、月・水・金曜日を出勤のように休みを挟みながら働きます。通院や治療などと両立しやすく、体力に不安のある方も安心して働くことができます。週3シフトの場合は1日5時間働いても週20時間未満となり、雇用保険対象外となることに注意が必要です。まずは無理なく働きたい方におすすめのシフトです。
A型事業所の給料だけで生活できる?
A型事業所の給料だけで、ひとり暮らしや家庭を支えることは可能なのでしょうか?生活費とのバランスや各種支援制度との併用の実情について、ここで解説します。
実際はフルタイムで働いても収入は少なめ
A型事業所の給料は一般企業と比べると最低賃金が基準のため、例えフルタイムで働いたとしても低い水準にあります。例えば全国平均賃金の86,752円から、一人暮らしの家賃や食費、光熱費、通信費、医療費などを引くと収支はギリギリとなるでしょう。そのため、生活するためには事業所からの給料プラス、障害年金などの公的支援と組み合わせるのが現実的です。
障害年金・各種手当との組み合わせが前提
多くの方が、障害年金など補助制度と組み合わせて生活しています。障害年金は所得による支給制限がありますが、A型事業所での給料では停止されることはありません。
「障害厚生年金」の場合、令和7年度の年間支給額が、障害基礎年金 1級は「1,039,625円」、障害基礎年金 2級では「831,700円」です。月額で約8万円〜7万円が収入にプラスされ、給料と合わせれば約14万円〜16万円となります。障害年金の他に障害者グループホームや、お住まいの自治体の福祉手当なども併用しましょう。
働くことは自立への大切なステップ
A型事業所で働くことは自立に向けた大切な一歩です。ただ働いて給料をもらう場ではなく、一般就労や生活の安定などへ向けての土台作りとなります。給料の金額も大切ですが、まずは無理なく働きながら、「働く自信」や「生活の基盤」、「将来への見通しを立てること」を目的とすることをおすすめします。
A型事業所の給料で生活できるかについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
給料面でA型事業所を選ぶ際のチェックポイント
「どのA型事業所を選ぶか」で、給料や働き方は大きく変わることもあります。納得のいく選択のために、見学時に確認したい項目や事前にチェックすべきポイントをまとめているので、参考にしてください。
選ぶ際のチェックポイント
- 時給の設定
事業所によっては最低賃金以上の時給の場合があります。 - 1日の実動時間と週の出勤日数
週に何日、何時間働けるかは同じ時給でも差が出てきます。 - 交通費、昼食支援、手当などがあるか
手取り額に直結するため制度があるか確認します。
見学や体験に行ったときには、「実際に働いている方の月収例」や、「手取りでいくらになるか」を聞いておきましょう。トラブルを防ぐためには曖昧にせず、具体的な数字をメモしておきます。また、将来の収入アップにつながる、一般就労への支援体制があるかどうかも確認しておきましょう。
雇用条件も確認
給料以外の雇用条件である、業務内容の詳細、契約期間の有無、休暇・休日について、保険加入の有無、試用期間があるかも確認します。少しでも気になることは、契約する前にクリアにしておきましょう。
契約内容に不安がある場合は、支援者や家族などに同席を行ってもらうこともおすすめです。事業所を選ぶ際には時給の金額だけでなく、業務内容が自分に合っているかや通いやすさ、職場の雰囲気など総合的に判断しましょう。
まとめ:自分に合った働き方と収入バランスを見つけよう
A型事業所は安定した雇用契約のもとで働ける福祉サービスですが、給料や働き方は事業所によってさまざま。平均給料額を把握し、自分の生活スタイルや希望に合った環境を選ぶことが大切です。見学や相談を通じて、給料だけでなく仕事内容や支援体制も確認しながら、自分にとって無理なく続けられる「働く場所」を見つけていきましょう。